衆院法務委員会理事懇談会が22日夜開かれ、「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案」(入国管理法改正案)に関する質疑をめぐり、与党側は同日に続き定例日でない26日に、衆参両院での予算委員会後に1時間の質疑を行うことを、これまた葉梨衆院法務委員長(自民)の職権で決めました。

 同委理事懇談会後、立憲、共産両党の衆院法務委員会理事は国会内で記者団の取材に応じました。

 野党筆頭理事の山尾志桜里議員は、同日朝の理事会で与党側から「26日2時間」の委員会質疑の提案に対し、「予算委員会の集中審議を行った後に定例日外で2時間の質疑を行う必要性、予算委で総理や法務大臣からこの問題についてさまざまな重要な答弁があるだろうから、それをしっかり吟味する時間をなぜ作らないのか」と撤回を求めたところ、与党側は国対に持ち帰るということだったものが、夜の理事懇談会ではなぜか2時間の質疑が理由なく1時間に縮まり、この1時間の質疑を与党がやるのか野党がやるのか一切触れられることなく職権で立ったと報告。時間短縮の理由を尋ねると、自民党の平沢筆頭理事からは「国民の関心が高く、早く成立させるべきだ。今日の参考人からは『拙速だが成立させるべき』との意見もあった」との発言のみで、今国会成立ありきで、どうしたら充実した審議ができるかという観点が一切抜け落ちた提案が続いている状況だと述べました。「結局与党がやっても野党がやってもいいんだ。とにかく1時間でも2時間でも時間を積み上げるがための提案であることがこの1点をもって明らかになった」と指摘。「私自身法務委員会の委員を何回か務めているが、与党か野党かどちらがどのように質疑をするかという提案がなく、ただただ2時間やらせてくれ。それがだめなら1時間やらせてくれ。その真意を確かめることなく職権で委員長も決めていく。追随し追認していく委員会運びは初めてだ」と指弾しました。

 共産党の藤野議員は、21日に技能実習生の失踪者のデータをめぐり誤りがあったと山下法務大臣が謝罪したことに触れ、「誤ったデータの中身がまさに我々が求めた、国会の決議に基づく個票だった。それに基づいて私たちはあの個票を閲覧という限られた形ではなくしっかり出すべきだと求めた。今日参院でも衆院より広げた形でデータを見て、それに基づき500件近くの分析をしたところ、衆院では約180件のサンプルで最低賃金以下が70%だったものが、今度は最賃以下が85%になっていた」と指摘。制度の根幹にかかわる失踪者の実態を明らかにしないまま拙速に審議をすることは許されないと断じました。

 山尾議員はまた、定例日以外に委員会を開くことで個票を閲覧できない状況を与党や委員長が作り上げていると問題視。藤野議員は「『技能実習制度はいいものである。9割方は満足している』というのがこの法案の前提であり、これまで法務大臣も安倍総理もそうした答弁をしてきたが、法案審議の土台が崩れている。いみじくも(平沢)筆頭(理事)が『1分でも1時間でも』という言い方をしていたが、国民は充実した審議を求めているのに、与党であろうが野党であろうがとにかく時間を積み上げようという姿勢は国会の在り方として許されない」と批判しました。

 同委員会では同日も定例日外であるにもかかわらず委員長の職権で開かれ、野党は抗議し参考人質疑のみ出席し質疑を行いました。藤野議員はこの参考人質疑でも母国のブローカー、日本国内のブローカー双方から現行制度の問題が指摘がされ、弁護士も支援団体も「今度の法案では(問題について)手当されていない」との指摘があったとして、「法案の中身の議論をやらなければいけない」と強調しました。