参院本会議で21日、立憲民主・民友会・希望の会、国民民主・新緑風会、共産、沖縄の風の4党派が提出した麻生財務大臣・金融担当大臣問責決議案と、維新の会・希望の党を加えた5党派で提出の金子原二郎予算委員長解任決議案が審議され、両案とも賛成少数で否決されました(写真上は、麻生大臣問責決議案の趣旨説明をする蓮舫副代表)。
■金子予算委員長解任決議案
金子予算委員長解任決議案の趣旨説明に立った小西洋之議員は冒頭、4月12日に野党5会派が参議院規則38条2項に基づく予算委員会開会要求を金子委員長に提出したにも関わらず、「本日までの72日間、金子委員長は本院規則違反を犯し、この開会要求に応えることはありませんでした」と述べ、これは「憲法58条が定める国会の自律権を否定する暴挙であり、我々立法府の行政監督機能を無きものにする、議院内閣制そのものを否定する暴挙。更には参院選前の総理質疑を封じるという民主主義及び国民主権を否定する空前の暴挙」だと批判しました。
その上で、(1)毎月勤労統計問題(2)老後の蓄え2000万円問題(3)イージス・アショア問題(4)国家戦略特区問題(5)イラン訪問(6)日米貿易交渉(7)空母保有(8)北朝鮮外交、韓国関係――などを取り上げ、予算委員会を開会し議論すべき内外の諸課題が山積していると説明しました。
参院規則38条2項には、「委員の三分の一以上から要求があつたときは、委員長は、委員会を開かなければならない」とあり、その趣旨は逐条解説書において「委員長は、中立公正にその職務を行うのが当然の責務であるが、委員長が委員会を開く意思がない場合、委員の三分の一以上から要求があれば、委員長は必ず委員会を開かなければならない」と書かれており「殊(こと)に、委員長が故意に委員会を開かない場合を慮って(おもんばかって)、この規定が置かれた」ことが明記されていると紹介、「規則38条は、委員長が党利党略に絡め取られ、あるいは、官邸の言いなりに陥るような今日の異常事態を含め、何があっても絶対に国権最高機関の立法府が、国民のために、委員会を開会するための規定」だと訴えました。
また、安倍総理が「悪夢のような」と批判する民主党政権時代の予算委員長は開会要求を受け、数日以内に開会をしていると説明した上で、「民主制における国民にとっての最大の『悪夢』は、唯一の国民代表機関である国会の委員会が開会されないこと。国民の命や幸せが懸かった国政の重要課題が、本院の第一委員会である予算委員会で安倍総理に対して質疑すらされず、欺きと誤魔化しと隠ぺいのまま国民生活と経済が破綻に向かう。まさに予算委員会を開催しない安倍政治こそ、日本国民にとって、日本の民主主義にとって『悪夢そのもの』」と批判しました。
杉尾秀哉議員は賛成の立場から討論を行い、冒頭、「衆議院5期、参議院2期、長崎県知事3期と、超ベテラン政治家であるあなたの識見とバランス感覚、そしてリーダーシップに私たちは期待していました。しかしながら、今回の予算委員会開会要求に対する対応はまことに残念きわまりなく、あなたは、行政府をチェックする重要な舞台である予算委員会の長としては、あまりに不適格と断ぜざるをえません」と述べました。
また、金子委員長が昨年の通常国会の締めくくり質疑で「予算委員会は、総予算の審議が終了したら終わり、と言うことは決してない」「決裁文書書き換え問題も主体的・継続的に調査し、真相解明する』という宣言をされたことを取り上げ、「今回の対応はあの時とは全く逆。この予算委員長としての矜持は、いったい何処に行ってしまったのか」と批判しました。
さらに「委員会が開かれても我々は出席しない」と言い放ち、正々堂々と「審議拒否」する、与党の「数のおごり」があると指摘、「これぞまさに究極の『サボリ』であり、国会制度の想定を越えた『蛮行』と言わざるを得ない」と与党議員の姿勢も批判しました。
最後に、「参議院が言論の府としての権威を回復すること。そして、真に国民に資する国会としての職責を果たすためにも、かくも長きにわたり開会要求を無視し続けてきた金子委員長の地位を、一刻も早く解く事こそが国民にとって最善である」と述べ討論を終えました。
自民党の高橋克法議員は反対の立場から討論を行いました。金子委員長が「公正な委員会の運営に努めてきたことは周知の事実」と述べ、参院規則(委員の三分の一以上から要求があつたときは、委員長は、委員会を開かなければならない)に基づき野党が要求している予算委員会開会について、「委員会を開催する道を真剣に探り続け、政府与党側にも努力を求め続けてこられた」と説明。また、総理出席のもとで決算委員会で締めくくり総括質疑が開催されたこと、党首討論では「各党党首と白熱した議論が交わされ」たことを挙げ「予算委員会至上主義あるいは予算委員会偏重という印象を拭えない」と逆に提出者側を批判しました。
さらに、県議3期、衆院議員5期、県知事3期、参院議員としては決算委員長を務めたことなど経歴を紹介。「人柄や実績は多くの方から、尊敬されこそすれ予算委員長としての運営も何一つ批判される所以はありません」と述べました。
■麻生財務大臣・金融担当大臣問責決議案
麻生財務大臣・金融担当大臣問責決議案の趣旨説明に立った蓮舫議員は冒頭、何人辞任しても不十分なほど財務省や金融庁をめぐる問題が次から次へと発覚したと語り、「麻生大臣はその都度、まったく指導力、解決力を示すことなく、ただただ指摘をうやむやにしながら先送りを繰り返してきた。もう限界です。麻生大臣がこれ以上地位に留まるべきではない」と指摘しました。
その上で、(1)金融審議会報告書問題(2)森友学園公文書改ざん問題(3)福田財務次官セクハラ問題(4)スルガ銀行不正融資問題――を取り上げ、麻生大臣の責任について言及しました。
江崎孝議員は賛成の立場から討論を行い、冒頭、「開くべき予算委員会を開かずに国会議論を放棄し、国民生活に大きく関係する議論すべき内容の報告書を無かったものにして議論に蓋をする。まったくもって言語道断。委員長解任決議や大臣問責決議の議論より、予算委員会を開き、報告書の内容をしっかり議論する方が、今やらなければならないことのはず。その議論の方が国民の皆さんにとっても遥かに有意義。議論の府である国会活動を与党が放棄する以上、問責決議という非常手段を使い、あなた方の無作為と卑怯な態度を国民の皆さんに知ってもらうしかない。大臣問責決議案提出の責任は麻生大臣だけでなく与党議員すべてにある」と指摘しました。
さらに、(1)麻生大臣が総理大臣であった時の経済政策(2)金融審議会報告書問題(3)「ナチスの手口に学んだらいい」といった失言を繰り返す政治家としての資質――などを指摘しました。