衆院厚生労働委員会で20日、質疑に立った阿部知子議員は、新型コロナウイルスの検査体制に対し(1)入院時検査の保険適用(2)妊娠時検診にPCR検査を実施すること(3)介護施設のクラスター対応(4)東京都の永寿総合病院(台東区)の院内感染対応――について、政府提出の社会福祉法人法等改正案に関しては介護福祉士の国家資格の一元化の経過措置等について取り上げました。

 阿部議員は、新型コロナウイルス感染症に関し、日本では死者数は少ないと言われながら今じわじわと上がってきている、その大きな原因は医療や介護現場でのクラスターにあると指摘。クラスター対策班が取りまとめた、クラスター発生数253件のうち医療機関が86件、介護・福祉施設、障害者・児童施設などが59件という集計結果を紹介し、そのうち特に老人福祉施設について言及しました。千葉県で死亡者数37人のうち17人が介護老人保健施設(老健)の入所者だったという事案が起こったこと、札幌の老健で入所者と職員81人が感染し、うち入所者は64人という事態が起きていることを取り上げ、「老人保健施設はリハビリのための中間施設で、病院から在宅のあいだのリハビリをしてもらい、100人の入所に対しほぼ1人という状態だが医師がいる。そのため、(老健では)重症者を治療できる状況にないにもかかわらず、老保から保健所に患者発生の連絡がいくと、保健所からは老健には医師がいるのでそのまま入所させておいてほしいと言われ、結果集団感染を招くことになってしまった」と問題視しました。

 厚労省の通達には、「高齢者や、基礎疾患を有する者である場合は原則入院することになる」と書かれ、本来、感染が判明したら優先的かつ速やかに入院させるようにとあります。しかし、「ただし、入院調整までの一時的な期間について、都道府県の指示により介護老人保健施設等で入所継続を行うことがある」とあることから、多くの患者を振り分け、調整する保健所としては、ベッド体制が足りないなか、そのまま老健に留め置くという判断をすることになっているのだろうとの見方を阿部議員は示し、「この但し書きは極めて誤解を招きやすい。こういうことで何人もが亡くなられている。これを是正していただきたい。但し書きを削り、ハイリスク分はきちんと病院で治療を受けられるようにすべきだ」と求めました。

 加藤厚労大臣は、そもそも医療提供体制が整っていないことが問題だとした上で、「状況をしっかり把握しながら基本的には原則入院という原則にしたがって対応してもらえるよう、現場と連携していきたい」と応じました。

 阿部議員は、大規模な院内感染が起きた永寿総合病院では、病院に関係する感染者は214人に上り、亡くなったのは合わせて42人、その内訳をみると血液の基礎疾患を持っている人が22人で、感染する前の早い段階で転院していれば助かった命もあるとして「いつまでも留め置かれることによって感染が拡大していく。これは永寿病院でも老人福祉施設でも一緒。感染が発生した病院で転院できない患者さんがたくさんいて、その方たちが結果として感染して亡くなっている。これまで、コロナの患者さんに関しては中等症を中心に重症、軽症を分けてシステムを作ってほしいと申し上げてきたが、もう1つ、医療提供体制総体を見て、どのような患者さんをどこに移して差し上げられるか、そこに力を入れていただかないと犠牲は後を絶たない。厚生労働行政で、各自治体としっかりタグを組んで、二度とこうした不幸な犠牲者が出ないようにご尽力いただきたい」と訴えました。

 加藤厚労大臣は「これまでの医療受け入れ体制の反省すべきところは反省しながら考えていかなければいけない」と答え、阿部議員は「そうしたなかで公立・公的病院改革で削減している場合ではない。機能的、機動的に患者さんの転院や、お互いの協力を作っていく時代だ」とあらためて指摘しました。