枝野幸男代表は19日、「令和2年7月豪雨」で被災した熊本県を視察しました。党熊本県連合代表の矢上雅義衆院議員、濱田大造熊本県議会議員の案内で、視察には岡島一正衆院議員(党災害対策局長)、森山浩行衆院議員(同局長代理)、野田国義参院議員(党福岡県連代表代行)、川内博史衆院議員(党鹿児島県連代表)が同行しました。
はじめに枝野代表は熊本県庁を訪問し、蒲島郁夫知事より被害状況の説明を受けました。熊本県内では65名の方が亡くなるなどした人的被害をはじめ、インフラ、産業に甚大な被害が発生しました。いまなお2000名以上が避難中で、車両で到達することができない孤立集落が当初の134集落から減ってはいるものの、現在も5集落が孤立状態にあります。
蒲島知事からは、(1)感染症対策の観点から災害ボランティアの受付を県内のみに限定しているが人手が足りておらず、感染症に対する安全性と人手不足の課題をどのように解決するかについて苦慮していること(2)現時点での産業被害を360億円と算出しているが、これがさらに拡大する可能性もあること(3)つなぎ融資のような「仮の」支援だけではなく東日本大震災のときのグループ補助金のような支援があれば将来がより見通しやすいこと――等の説明を受けました。
同行した矢上県連代表からは、今回の球磨川の氾濫は想定を超えたもので、大量の水が一気に押し寄せる津波のようだとの受け止めが示され、今後必要な対策として、大量の流木・土砂の撤去を県外含めた建設業者へ業として依頼する仕組みや、土砂・家財を残置したままでも公費で解体できる仕組みを確立することが必要との指摘がありました。
続いて、球磨川中流で特に大きな被害を受けた人吉市に入り、球磨川を望むホテルで、自治体議員、連合熊本人吉・球磨地域協議会の皆さん、災害ボランティアの方々から話を聞きました。
地域の皆さんからは、現場での被害状況のほか、「川辺川ダムがあればという話もあるが、ダムをつくるのであれば、今回の水害でどの程度の洪水が発生したのかなど、きちんと調査しデータを示し議論してもらいたい」「今回の洪水は想定外というが、河床を掘削する対策が遅れている。国交省には河床を掘削したり、川幅を広げたりする対策をお願いしたい」「高速道が無料になっているが渋滞が起きている。高速の出口の少し先にスマートインターがあり、無料区間をそこまで広げてもらうと渋滞が解消されると思う」「発災から10日以上たち、高齢者に『元の生活には戻れない』とあきらめの声が出ている。災害住宅を早く建てる支援など、心の動きを受け止める対応をお願いしたい」といった、球磨川の治水のあり方や現状についての意見がありました。その後、球磨川にも近い紺屋町の商店街周辺を歩き、浸水被害を受けた家財や土砂の運び出し作業に追われる住人やボランティアの方々から話を聞きました。
さらに人吉市災害対策本部では職員の方から市の状況について説明を受けました。人吉市では行財政改革として職員給与の引き下げなどを進めてきており、住民の生活を十分に支えることができない苦しい状況にあることから、自由度の高い基金をつくる等の支援を必要としていること、災害ボランティアの支援もあるが支援を必要とするすべての住民に行きわたっていないこと等の説明を受けました。
その後、球磨村の災害対策本部を訪問。球磨村では、球磨川沿いを走る国道219号が洪水被害を受けるなどし、国道は早期に復旧した部分はあるものの、交通がままならない地区も残っている状況が続いています。
職員から、球磨村は人吉市と共同でボランティアを受け入れており、80名ほど受け入れたが、400名が避難しているなかではとうてい足りない状況であること、区域内には仮設住宅を建てる土地がないこと、区域外で避難生活をおくった方が帰ってくるか不安があること、林業や渓流下りなど地域産業は人が帰ってこないと成り立たないことから帰ってきてもらえる村づくりが課題であること等の説明がありました。
最後に、球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」を訪問。千寿園は、球磨川と流れ込む支流との合流地点の近くにつくられた福祉施設で、施設では水害を想定した避難訓練も行われていましたが、想定外の浸水で14名の入所者が亡くなりました。枝野代表は応対いただいた職員へお悔やみを申し上げ、献花、黙とうを捧げました。
視察中、記者団の取材に応じた枝野代表は、地域ごとに異なるニーズにきめ細かく対応する必要があること、今般の新型コロナウイルス感染症の影響で災害対応が遅れがちであることなど指摘。複合災害ともいえる状況のなか、災害ボランティアには国が負担する形でPCR検査が受けられる仕組みや、片付けなどを地元業者に業として担ってもらうための支援などが必要との認識を示しました。
また、今回の災害で精神的に疲弊して元の暮らしをあきらめてしまう方もいるのではないかとの話があったことから、「被災者の方が希望を持てるよう取り組みを進めたい。例えば、東日本大震災のときのグループ補助金のような支援の方向性も必要であろう。特に熊本は2016年の熊本地震からコロナ禍、今回の水害と、厳しい財政状況の自治体もあり、地域が展望をもって進んでいけるよう取り組みたい」旨の今後の取り組みの方針を述べました。
記者から、税金が投入されたGoToキャンペーンで県外から旅行客が熊本に来る一方、ボランティアは県外から入れない状況について問われると、GoToキャンペーンをそもそも今の時期にやるべきことなのかと疑問視した上で、「密になりやすい避難所で感染を避けたいということから、災害ボランティアと旅行者とで異なる扱いとなることは理解できる」と語り、県外からの災害ボランティアが入るための条件整備が必要との認識を示しました。さらに「ボランティアなしに災害対応が成り立たない国は先進国とは言えない」と語り、「政権についたら災害ボランティアを政府のチームとして位置づけることを構想している」と述べました。